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弾かない時は弦張ったままで良いの?緩めた方が良いの?


Osugi music instrumentsの大杉です。

今回はお客様からご質問頂く事の多い「弾かない時って弦張ったままで良いんですか?緩めた方が良いんですか?」と言う内容について取り上げていきたいと思います。

皆さんは楽器を弾かない時にどんな状態で保管されてますでしょうか?

修理や調整でお持ち込み頂くと、かなりの割合で保管方法についてのご質問を頂きます。 

弦楽器で一番変化して且つ演奏性に影響する部分がネックな訳ですが、お預かりする際に順反りしていたり、逆反りしていたりと楽器によって状態も様々です。

そもそも順反りと逆反りってどう言う症状なの?って方のために簡単に症状を説明させて頂くと

「順反りが強い場合」

弦高が高くなる。ハイポジションで音程が「#」する。

「逆反りの場合」

ローポジションでビリつきや音詰まりが出る。

といった感じです。参考までに。


楽器を購入後暫くして弾き心地の変化を感じた事のある方も多いかと思います。実はネックの状態は日々少しずつ変化しているんです。湿度、温度、張力によって刻々と変化しています。チューニングを合わせておいたのに翌日にはズレていた。なんて事があると思いますが、あれもネックの変化による現象の一つです。(ネックだけではありませんが)

緩めるかどうかを楽器屋さんに尋ねて返ってくる回答は「張った状態を考慮して作られてるから張ったままで大丈夫」や、「張力で反ってしまうので緩めて保管して下さい」と二分されています。ネットを見ても同様に二分されています。

これではどちらを信じて良いのかよく分かりませんよね。

結論から言いますと私がご案内しているのは「弾かない時は緩めて下さい」です。

ではなぜ緩めた方が良いのか紐解いていきましょう。

まず、「張ったままで良い」と言う理論についてのお話。

「弦を張った状態を考慮した設計になっているから張ったままで大丈夫」と言う方がいらっしゃいますが、木材は金属などと違い、同じ素材でも強度や特性にバラツキがあるわけです。

天然の素材ですからね。金属はネジ一つとってもどのくらいのトルクまで回せるかなどのデータがはっきりしています。一方木材は木目の大きさや通り方等、全く同じものが無いことからも分かるように、個体によって質量や木取りが異なりますので、強度や反り方が異なってくるわけです。したがって、あのギターは張ったまま10年経っても大丈夫だったし、同じメーカーの同じモデルだから大丈夫。と言う理論は成立しないわけです。

では次に、「緩めた方が良い」について。

簡単に言うと上記の理論が成立せず、腰折れや元起と呼ばれるネックの付け根の部分の反りや、トラスロッドで補正が効く部分での過剰な反りを防ぎ、楽器を長持ちさせるためです。

エレキ、アコギ、安価、高級に関わらず反るものは反ります。反るのはグリップ材だけでなく指板材の硬度も影響しますので見た目での判断が難しく、結果でしか言えないのです。

緩めてたら逆反りするんじゃないの?と言う方もいらっしゃるかと思いますが、緩めておいた方が良い理由がまだあります。

ネックが反ってトラスロッドで調整が効かなくなった時に熱を使って反りを修正するアイロン調整と言う修理方法がありますが、順反り方向に反っているものを逆反り方向に修正しても、弦の張力がかかるので再発し易いわけです。アイロン調整だけでは修正しきれない場合には、フレットの足が太い物を打って反りを修正したりと大掛かりになる場合が多くなります。しかし、逆反りしたネックを順反り方向に修正するのは張力が働いている方向への動きをアシストするので再発率も低く、理に適った修理と言えます。逆反りした際には大掛かりにならずに修正が行える場合が殆どですので、是非緩めて保管してみてください。

最後に

ネックのジョイント部分で起こる「元起き」はアコギだけの問題ではありません。Gibsonなどのセットネック特有の問題でも有りません。Fender等のデタッチャブルネックでも起こります。スペイン式のクラシックギター、フラメンコギターでも起こります。箱物の楽器ではネックだけでなく表板の歪みも起こりますので、緩めて保管する事を強くお勧めします。

トラスロッドを締め切っても反りが修正出来ない「ロッドが効かない」状態の楽器も中古市場でも沢山出回っています。きっと調整出来なくなって売られてしまったのでしょう。でも、そう言う楽器程、良い音してたりするんですよね。気に入って手に入れた楽器を手放すのはとても辛いですよね。でも諦めないでください。手立てはきっとあるはずです。どうすれば修理出来るか?を考え、提案し、形にするのが我々リペアマンの仕事。少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。


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