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ネック折れについて

いつもお世話になっております。

Osugi music instrumentsの大杉です。


今回はご相談頂く事の多いネック折れについて触れていきたいと思います。


転倒や落下と言った自責で起こる場合や、輸送等の他責で起こる場合など状況は様々。ハードケースに入れていても起こりうるネック折れ。大切な愛器に起きると現実逃避したくなりますよね…


現在に至るまでの経験則を元に修理工房ならでは観点から予防策と、ネック折れが起きてしまった時にどう対処すべきか、どのような修理方があるのか?を解説していきたいと思います。


<ネック折れの予防策>


ネック折れはなぜ起こるのか?

要因は多々ありますが、事象として考えるとネックに対する負荷の過大入力によって起こります。もっとも起こりやすいのがGibson等に代表される角度付きのヘッドのギター。Fenderなどの角度なしのネックは割れ以外ではお預かりした事がないくらいです。


予防するにはまず、

運搬時にペラペラのソフトケースを使わない。

エントリーモデルには必ずと言って良い程付属されているケースです。軽音部だとこれを使うのがお決まり的な。軽いしギターを出せば他のケースに比べて小さくまとまるので使い勝手は良いのですが、生地が薄いのでぶつけたりした時の衝撃はダイレクトに伝わってしまいます。打ちどころが悪ければ愛器が悲惨な状態に…

ハードケースじゃないとダメか…なんて声が聞こえてきそうですが、そんなこともありません。ハードケースでなくても大丈夫です。ウレタンフォームでモールドされた軽量なセミハードケースや、厚手なクッションで丈夫なギグケースがありますので、運搬時にはこう言ったケースがお勧めです。ショルダー式のものが殆どなので使いやすいですよ。

満員電車でもみくちゃになるような状況下や、ケースを転倒させてしまった場合では厳しいかも知れませんが、ソフトケースよりは確実に良いです。


次に、

楽器が入った状態でケースを立てかけない。

意外と多いです。

立てかけてしまうとふとした衝撃で倒れる可能性が高いので、寝かせておくことで倒れるリスクを未然に防ぐのがお勧めです。


意外と効果絶大なのが、

弾かない時に弦を緩める

弾き終わってから、運搬時等、ふとした瞬間に転倒等の衝撃が加わった際に、弦を張ったままですと確実に折れてしまいます。

と言うのもレギュラーチューニングでネックにかかる張力はエレキで50㎏、アコギでは70㎏と言われています。

これに転倒等の衝撃が加われば折れるのは容易に想像できると思います。

しかし、張力がかかっていない状態で倒れた場合はどうでしょう?私自身レスポールスタンダードを所有していた学生時代に誤ってスタンドから倒してしまった事がありました。幸い弦を緩めていたお陰でその時は折れずに済みました。折れない事もあるんです。だまされたと思って緩めて保管してみてください。絶対に折れない訳ではないですが、折れずに済むケースも多いはずです。


<万が一ネックが折れてしまったら>


ストラップが外れて落下してしまったり不慮の事故が起きてしまったときはどうすれば良いのでしょうか?

修理工房の観点からお伝えさせてください。


まず、

弦を緩める

これが意外と大事なんです。

それどころではないかも知れませんが、ネックの損傷を現状より悪化させないためにまず弦を緩めておいてください。


そして、可能な範囲で構いませんので

出来るだけ早めに修理に出してください。

保管環境によって割れ口が反ってしまったり、破損が大きくなる場合がありますので、お早目の修理をお勧めします。


もう一つ大事なのが、

瞬間接着剤を使って自分で修理しない

結構多いのがこれです。焦っているのと、何とかしたいという気持ちは非常によくわかるのですが、一番厄介な処置が瞬間接着剤での処置なんです。

DIYで処置されたであろう楽器がヤフオクなんかで結構出回っているのを見かける方も多いかと思います。

何故瞬間接着剤がダメかというと、接着剤は衝撃に弱く弦の張力に耐えられず再発してしまうんです。そして何より再修理が困難。

ボンドや膠であれば水に溶けるので熱を使ったりして除去し再修理を行うことが可能ですが、瞬間接着剤はモノによって木部に浸透して繊維ごと固めてしまうので、除去が困難で、再接着では強度が足らず補強を入れないと強度が担保出来ない場合もあり、工賃が高額になってしまうのでご自身で瞬間接着剤を使って接着するのは絶対にやめましょう。


<どのような修理方法があるのか>


割れの状態やご予算の面でベストな修理方法は様々ですが、大まかにどのような修理方法があるのかご説明していきたいと思います。


まず1つ目が

接着のみ

割れ方がきれいでヘッドとの分離が無い場合には、接着だけで折れる前と同等の十分な実用強度が得られます。接着のみで強度的に問題無い場合が殆どです。


2つ目は

接着+補強(プラグ)

こちらは接着後、割れ口を跨ぐ形でプラグ状の補強材を入れる修理方法です。

添付の画像は海外のリペア工房で行われた修理の拾い画像です。

狙いは接着面を大きく取って強度を上げるというものです。

ただ、過去に他工房でこれをやって再発し、お預かりした事が多々ありますのでこちらでは採用していない修理方式です。


3つ目は

接着+補強(突板)

こちらは接着後、割れ周囲の木部を抉って接着面を大きく確保して強度を稼ぐ修理方法で接、割れが複雑であったり破片が足りない場合等の接着だけでは強度が足りない場合に行います。プラグ方式に比べて接着面が大きく強度が高いのが特徴ですが、加工の難易度も高いのが特徴です。(当工房ではこちらの方法で補強を入れさせて頂いています)


この他にも、接着しただけでは傷跡が目立つので塗装修正を行ったりして傷跡を目立たないようにする方法もあります。

基本的に補強を入れる場合は塗装修正はセットになります。


<最後に>

修理内容によって預かり期間や工賃は異なりますが、ネックが折れてしまっても必ずまた演奏可能な状態に修正可能ですので、信頼できる工房へご相談下さい。


大杉

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